2024/06/01 シルクと文化
金色姫伝説
日本における養蚕始まりの地とされ、古くから信仰を集める「常陸国の三蚕神社」に縁の伝説があります。それが金色姫伝説です。
[金色姫伝説]
昔インドのお姫様が、継母に虐められ、桑の木で作った船で流されてしました。
流れ着いたのが、「豊浦」と言う地。
漁師の権太夫夫婦は、姫を看病しますが亡くなってしまいます。夫婦は悲しみ、唐びつを創って姫の亡骸を納めました。
その夜、権太夫の夢の中で、姫が「食べ物をください」と訴えます。
翌朝、権太夫夫婦が棺を明けると、亡骸は無く、蚕がたくさんいました。
夫婦は、姫が桑の木の船に乗ってきた事を思い出し、桑の葉を与えます。
やがてその蚕は繭を作りましたが、繭をどうして良いのか分からず困っていた権太夫。再び夢を見て、筑波山の仙人から糸をとる方法を教えてもらい、養蚕を営みました。
これが養蚕のはじまりだと言われています。
といった内容です。
金色姫が常陸国の「豊浦」という地に姫が漂着したとあるので、この3つの神社の所在に同地名を含んでいることはとても興味深いところです。
なぜ金色姫伝説が関東甲信越地域で広く信仰されることになったのか。
諸説ありますがこの金色姫伝説を明治以降に広めたのは蚕の卵を売っていた蚕種商人ではなかったかと言われています。
結城紬を作る結城蚕種というブランド蚕種を各地で販売する際にこの金色姫伝説を謳っていたのだろうと考えられています。
近代以降の養蚕業の発達と結びついて養蚕信仰は高まり、養蚕業の衰退とともに信仰も衰退していきました。
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2024/05/01 シルクと文化
常陸国の三蚕神社
明治以降は逆に日本からの絹製品の輸出が増え、さらに養蚕業がさかんになり、養蚕業に携わる人々が関東甲信越を中心に、参拝者として各地から訪れました。
茨城県は結城紬(常陸紬)の産地としても知られていますが、絹川、蚕飼川、糸繰川など蚕業に関わる地名も多くいことから、この地域がいかに養蚕業が盛んであったがわかります。
そして蚕神を祀る神社も多く残っていて、なかでも「常陸国の三蚕神社」と呼ばれる神社が聖地として重要な位置を占め、養蚕業の広がりとともに信仰も各地に広がっていきました。
三蚕神社は各地に分霊され、現在も同じ名前の神社が全国各地にありますが、常陸国の三蚕神社はそれらの神社の総本山であると考えられています。
・日本一社:『蚕影山(こかげさん)神社』(茨城県つくば市神郡豊浦)
・日本最初:『蚕養(こがい)神社』(茨城県日立市川尻町豊浦)
・日本養蚕事始め:『蚕霊(さんれい)神社』(茨城県神栖市日川)(豊浦浜・豊良浦)
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2024/04/01 シルクと文化
京都の蚕の社
嵐電「蚕ノ社」駅の東にある「蚕の社」は、祈雨の神として信仰を集め、京都でも最も古い神社の一つです。
『続日本紀』大宝元年(701)の記事にこの社の名前が記されていることから、建立は飛鳥時代のものではないかと推測されます。
本殿東側に織物の始祖を祀る蚕養(こかい)神社があることから、この神社は通称を「蚕の社(かいこのやしろ)」又は、「木嶋神社(このしまじんじゃ)」と呼ばれています。
木島神社の西には、聖徳太子に影響を与えたとされる秦河勝ゆかりの広隆寺があります。
渡来人であった秦氏が養蚕技術をこの地にもたらしたと言われており、古くから秦氏の大集落があったとされることから、この地は太秦(うずまさ)と呼ばれ、木島神社も秦氏ゆかりの神社と考えられています。
日本の絹産業では富岡製糸場と絹産業遺産群が有名ですが、京都にも秦氏、太秦、蚕の社など、日本の絹産業の歴史に深く関わってきた遺産が多く残されており、その歴史の古さを考えると日本の絹産業の原点は京都にあると考えられます。
実際、平安時代には京都の地で絹織物業は宮廷文化を中心に発展を遂げ、それが現在まで引き継がれているのです。
平安以降、近世まで律令体制が崩壊により、官の独占であった蚕糸絹業は、生産力が下降し、有力者による生産と輸入に頼っていくことになります。
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2024/03/15 シルクと文化
養蚕業の発達と蚕神信仰
江戸時代以前は生糸は輸入に頼っていましたが、江戸時代以降は絹の国内需要が増えたため、輸入による金銀の流出を防ぐために幕府は生糸の輸入を制限して、国内の養蚕を推奨するようになりました。
養蚕業は畿内中心から、関東、東北地方に拡大し、この地方の農家では養蚕が短期間で大きな収入を得られる生業で、その成否が一家の盛衰に多大な影響を及ぼすようになりました。
そして絹織物も西陣だけでなく桐生織も流通するようになっていきます。
このころ知識や技術の向上のため、養蚕のための手引書が蚕種作りを商う蚕種家によって多く書かれたようです。
とはいえ、蚕は繊細な生き物で、蚕自身の成育が難しいことや、餌となる桑の生育、蚕の天敵であるネズミなどの食害など様々な問題に立ち向かうため、精神的な支えとして信仰の存在がありました。
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2021/09/02 シルクと文化
上代裂と古代の染色方法
飛鳥・奈良時代までの古い織物の断片を上代裂(じょうだいぎれ)といい、そのほとんどが奈良の法隆寺と正倉院に残されています。麻や羊毛で作られたものの他、絹で作られたものも多く、織では錦(にしき)と呼ばれる先染めの絹糸や金銀糸用い、地色や文様を織りだした高価な素晴らしい作品が多く残されています。
染め物では『天平の三纈』と称されて世界文化遺産に指定されている品々が保管されています。ここで『三纈』という奈良時代からある三種類の防染の技法を使った染色方法についてご紹介します。
① 絞り染め・・・纐纈(こうけち)
生地を糸や紐で縛ったり、生地を縫ったりすることでその部分が染まらないように防染してから染色する技法。上代の纐纈は緻密な柄ではなく、素朴な幾何学模様が多いですが、中にはどのように絞ったのかわからない高度な柄もあります。
② 板締め・・・夾纈(きょうけち)
模様を彫った二枚の板の間に折り畳んだ布を固く挟んで、模様の部分にあなをあけて染料を注いで染める技法。模様に染めるのがとても難しい技法ですが、現在でも型紙を使う友禅染などではこの技法が使われています。
③ ろうけつ染め・・・臈纈(ろうけち)
蝋を熱で溶かしたものを生地につけて防染し、蝋を塗った部分だけが染まらずに模様となる染色技法。平安時代までは中国から輸入された蜜蝋を使用していましたが、遣唐使が廃止され蜜蝋が手に入らなくなり、一旦途絶えました。現在行われているろうけつ染めは明治末期に復活したものです。
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2021/07/27 シルクと文化
シルクは運気を上げる?
風水は4000年前以上前に中国で発祥した学問で、アジア各地に伝わりました。
風水は元々は環境哲学としてお墓や都市の建設に用いられ、日本にも600年頃に伝来し、平安京などの都づくりに用いられました。その後、文化や宗教と混ざり合い、現在のような身の回りの環境を整えることで開運するという日本独自の風水に発展しました。
現在も日本では風水を生活に取り入れ、風水で金運や運気を高めたいと考える人が一定数います。身の回りの衣・食・住の環境を整える、例えば毎日身に着けるもの。風水ではポリエステルやナイロンなどの化学繊維は、マイナスの火のエネルギーを持つため運気を燃やしてしまうとされ、綿や麻をはじめとする天然繊維が良いとされています。天然繊維の中でも特にシルクは、シルクロードの時代には金と同じように大切に扱われていたため、風水学上も特別な素材と考えられ、シルクのアイテムを身に着けると良いとされています。
シルクは肌触りもよく、機能性も優れているため、身に着けるだけでも快適で気持ちを豊かにしてくれる素材と言えますが、さらに金運や運気を上げることができるとしたらとても素敵ですね。
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