2021/09/02 シルクと文化
上代裂と古代の染色方法
飛鳥・奈良時代までの古い織物の断片を上代裂(じょうだいぎれ)といい、そのほとんどが奈良の法隆寺と正倉院に残されています。麻や羊毛で作られたものの他、絹で作られたものも多く、織では錦(にしき)と呼ばれる先染めの絹糸や金銀糸用い、地色や文様を織りだした高価な素晴らしい作品が多く残されています。
染め物では『天平の三纈』と称されて世界文化遺産に指定されている品々が保管されています。ここで『三纈』という奈良時代からある三種類の防染の技法を使った染色方法についてご紹介します。
① 絞り染め・・・纐纈(こうけち)
生地を糸や紐で縛ったり、生地を縫ったりすることでその部分が染まらないように防染してから染色する技法。上代の纐纈は緻密な柄ではなく、素朴な幾何学模様が多いですが、中にはどのように絞ったのかわからない高度な柄もあります。
② 板締め・・・夾纈(きょうけち)
模様を彫った二枚の板の間に折り畳んだ布を固く挟んで、模様の部分にあなをあけて染料を注いで染める技法。模様に染めるのがとても難しい技法ですが、現在でも型紙を使う友禅染などではこの技法が使われています。
③ ろうけつ染め・・・臈纈(ろうけち)
蝋を熱で溶かしたものを生地につけて防染し、蝋を塗った部分だけが染まらずに模様となる染色技法。平安時代までは中国から輸入された蜜蝋を使用していましたが、遣唐使が廃止され蜜蝋が手に入らなくなり、一旦途絶えました。現在行われているろうけつ染めは明治末期に復活したものです。
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